「あなた」が「僕」に「いっしょ」などとおっしゃいますから

三年生になってから教科や文理が分かれたりで、毎月おこなわれる席替えの多いこと多いこと、毎日席替えしているのではと思うほどでございます。もう慣れました。多すぎる席替えに慣れるとは、なにか贅沢な気がしますので、資源がほどよく分配されて世界におけるしあわせの総量の増大であると言いますかなんと言いますか、もっとしあわせの可能性があるのではと考える次第です。
きょう席替え(教科の席だから机は動かさない)でクジを引いたところ、たまにあることでございますが、いまと同じ席に当たりました。級友たちは席を立ち移動するのですが、僕はただ独り座っています。いじめでございませんか? クラスでただ独り取り残されています。右隣に座っていらっしゃいました級友が前を横切り、しかしああ嬉しいことです、「変わらんの?」と声を掛けていただきました。そうなんですよ、変わらんのですよ。
世界にはまだまだみえない希望が絶望という幕の裏で輝いている。そして絶望という幕を張るのはみずからのこころの弱さでしかない。そう悟った僕はもう独りでなくなったのです。そして新しく右隣にお座りになりました級友から、僕はまたしても声を掛けていただくのでした。
「いっしょ?」
へ? いっしょ? 「ぇうん、おんなじとこ」 いっしょという声の意味を解するやいなや、常識的な返答を申し上げることができました。ともすればこうです。
「いっしょ?」(わたしの隣にきをふしくんがいてくれるの? この授業のあいだはずっと、わたしたちいっしょだねっ!)

世迷い言はさておき、僕が彼女の髪型を好きだというのはないしょですよ。