プラトン・著、藤沢令夫・訳『メノン』

「徳」をさまざまな観点から探求するこの物語(とあえていいましょう)は、バズワードのはびこるいまどきにおいてもすごく参考になる。ある言葉について知らないのに、それをどうやって探求するのか。その言葉について知らないのに、どうしてその部分を理解できるのか。こういった哲学的な問いは考え込むと厄介だけど、んー、どうなんだろう
ある言葉を明らかにするための言葉をさらに明らかにしなければならない、意味の自己言及性というのは、言葉のつながりに階層構造があるという考えが前提になっているのではないかな。そんなものはない、と割り切って、あらゆるネットワークはフラットなんだ、と考えれば、ある言葉をべつのある言葉によって説明するのは、うまく完結するような気がする。あれー、なんか変だ。やめやめ。
「想起説」に関しては、単なる言葉の綾というか。まあ僕も「思い出す」という言葉に関してはいろいろ意味合いを込めることがありますが。「知識」と「正しいおもわく」の区別はおもしろかった。なんかあらすじしか書けないや……。
かなり勢いのある対話篇なので、読んでいるときはうおーってなるのですが、いざ感想を書くとなると難しい。でも、こんな文章が大昔に書かれていまに受け継がれている、という事実には、読みながら感動を覚えた。
装丁に気圧されずとりあえずページをめくってみてほしいな。僕は「一三」(p.42-46)で物語の幕があがって一気に疾走した。