細音啓『奏でる少女の道行きは──黄昏色の詠使いⅡ』

続編が読みたいなあと思っていた作品なので、本屋で見かけたときはとてもうれしくなった。赤の子かわいいよ赤の子。細音啓ってすてきな名前ですねー。
演出、っていう言い方はあまり文章に遣わないだろうけれど、じつに優れた演出に恐れ入る。オラトリオの名詠と地の文が入り交じるときの疾走感は森博嗣の『スカイ・クロラ』シリーズに近いものを感じるなあ。こんなふうに疑いなく、文章が美しいと思えることは、そうない。
あとがきが奇を衒わず好感がもてる*1。そこに書かれているとおり、本作はサブストーリ的な側面も大きい。赤色(と夜色)以外についても詳しくみていきたいなあ、と期待してた僕には、ちょっとはがゆい展開だったというのが正直なところ。
夜色とか灰色とか虹色とか、ぶっちゃけそういうのはまだいいんです。クルルの赤……はちょっと反則だけど(笑)、ミオの緑とか、そういう平凡な色をもっとみていきたい。白色に対する想いがなければ灰色の酷さは理解できない。五色のすべてがわからなければ虹色の深みはうかがい知れない。異端である夜色となれば、それこそ作中のだれにとっても未知であるかもしれない。そんな世界をもっと感じたい。

*1:奇を衒ったあとがきが嫌いなわけではないけれどw