講演メモ:「学は何処より来たりて何処へ向かうのか?」原島 博(元東大)

総合学術辞典フォーラムより。
まとめ:「総合学術辞典フォーラム」参加報告 - 反言子

「学は何処より来たりて何処へ向かうのか?」原島 博(元東大)

学問の歩みと今後のあり方についてご講演いただきました。未来を語れるのが若者だけではないということを痛感し、悔しさを感じるほどにエキサイティングな内容でした。

ダビンチコード→ダーウィン学?
自己紹介
 20代:情報理論→10Gイーサの世界標準2006。情報理論とその応用学会。
 30代:情報理論から新しい学問分野を。顔学会? 
  学の体系ってなんだ! 電気通信学会ソサエティ制の設計に関与
  いま:通信学会ハンドブック・知識ベース委員会委員長(→総合学術事典)
 40代:コミュニケーションの新しいパラダイムを提唱
  →ヒューマンコミュニケーション工学(←当時:技術用語じゃない!)、顔学会
 50代:学における文・理・芸の融合
  大学ダ・ヴィンチ論→情報学環
 60代:学のあり方そのもの
元ネタ:ポールゴーギャン「我々は何者か?」→どこからきた、どこへいく
 →学のダーウィン学(進化論)
学はどこからきた??? 科学の歴史
 科学者なのに科学の歴史、習わないよね(原島先生もそう。勉強したてで話したいw)
 14世紀:ラテン語のスケンティア(scientia:知)/信念・意見に対立
 近代科学:二つの革命
  17世紀:コペルニクス(16C)、デカルトニュートン
   自然哲学の方法論「実験的方法による実証的知識」(自然科学)
  19世紀:社会的な認知「科学者」という言葉の誕生
   専門化、職業化、科学教育、学会組織の整備「科学の制度化」(J.D.バナール)
   大学→象牙の塔フンボルトの改革)
 アカデミズム科学:同業者による学会結成(意見交換、専門誌、品質管理)
 ↓ 知的好奇心に基づく科学(curiosity driven)
 産業化科学
  20世紀後半:国家主導の巨大プロジェクト(軍事のための科学者集め)byブッシュ
  戦後:平和な時代も科学が大事よ! ブッシュ革命
  →missonに基づく科学
 科学のモード論:キボンズ現代社会と知の創造』
  モード1:科学者の好奇心による自己充足的・ボトムアップな研究
  モード2:国や産業から要請を受けたプロジェクト型・トップダウンな研究
   目的の社会的責任・情報開示・アカウンタビリティを負う
 日本の科学技術はどのように推進されてきたか???
  1980年代後半まで:産業振興を目的とした国家プロジェクト(モード2)
   中央研究室メインで大学の偉い先生がアドバイザーになるくらい(打倒IBM!)
    基礎研究の費用も研究者も企業が自前でやってた。大学は卒業生クレ。
   大学は科研費を使ったモード1
  1980年代後半
   ジャパンバッシング:基礎研究ただ乗り論(企業だから情報を隠す)
   バブル崩壊:企業の研究能力の弱体化→国!
    企業は製品開発への橋渡ししかできない
    →基礎研究は国が金だせ! 大学で成果を出せや! そして産業へ(ここ10年)
    こういうサイクルができあがった。つまり科学が産業になった。
  90年代以降
   国家主導の科学技術振興政策(だれさん?)
    「科学技術基本法・基本計画」「総合科学技術会議」など
    キーワード:競争的資金、任期、評価、産学官交流、ポスドク1万人
    大学の法人化(2004):競争的資金でやっていけ!
     「競争的資金獲得による研究請負機関」「教育も競争的資金獲得」の時代へ
これからどこへ向かうのか???
 原島「深刻な問題。このままでいいのか。考えなければ。若手のためにも」!!!
 クーンのパラダイム論:科学は連続でなく断続的に転換する(着実に進歩?NO)
  科学はあるパラダイムのもとで通常科学として遂行されるルーチンワーク(寿命)
  いい論文が1本出ると10人ph.Dが出る e.g.シャノン「情報理論パラダイム
  パラダイムに限界がきて新しいパラダイム
 競争的資金による研究とは?
  ルーティンワークを期待される(達成度の外部評価、短期5年以下、目標と競争)
  原島「近視眼的な経済の論理が学問にそのまま持ち込まれた」
 新しいパラダイムの研究をどう進めるか???
  学会をつくろう→モード1(鎖国型)(原島「楽しいから残したい」)
  大型研究費を獲得しよう(プロジェクト申請)→モード2
   請負・プロジェクト型、問題解決、輸入
 ほかにないのか!? (市民か???)
  モード3:開放型・ロングテール型(Linux型、ネットワーク型)
  学問2.0(笑) 知の共有、体系化、構造化が必要!(このとき、学会は?)
  メッセージ発信型・ビジョン型:シーズ&ニーズからウィル(意志)の科学へ
 長期的な展望をもった科学へ
  5年後を読むよりも100年後を読んだほうが簡単じゃない!?
  近代科学400年、アカデミズム科学150年、プロジェクト型科学50,60年
  考え方「500年後の歴史家がいまの科学をいかに記すか?」
   歴史の課題に応えているか? 歴史の審判に堪えるか?
 原島のシナリオ
  環境破壊、地球の時代の終わり、宇宙には何もない。情報も同じ。(笑)
  ・三大宗教(宗教を神とした時代)→中世→大陸の破壊
  ・ルネッサンス・近代合理主義(科学が神になった)→近代→地球の破壊
  ・絶対なる神の改革?→これから→文明の体質改善が必要!
 近代科学のシナリオ
  心身二元論:「科学」と芸術の分離、数学的方法論:「理系」と文系を分離
  これらを融合する新たなパラダイムを!
  知の学問として、科学を発展 but 知ることはいいことなのか!?
   e.g.ヒトゲノム。知ると利用したくなる欲望。バランスとれるの?
  知る、探求型科学から、創る、想像型科学:文化創造学としての科学
科学技術って?
 産業革命のころは技術だけだった。近代になって科学技術という領域ができた。
 技術は本来文化創造だ。