着想:制約は観点を内包する(問い:なぜ制約によって質や生産性が上がるのか)

なぜ制約によって質や生産性が上がるのかと思って、書こうとしたけれど、このときはただの疑問でしかなくて、日付を埋めただけだった。
一つの回答が浮かんだ。すなわち、制約は観点を内包する。観点:ものの見方、ものへのひかりの当て方。連想的に言い換えるなら、ものをみると目的と、その目的のための問いというコンビネーションである。つまり制約は視野の制限でなく、視野そのものである。

木構造(階層構造)で物事を整理することはよくある。場合によっては、その木構造の(ある一面での)表現力のなさが気にかかることがある。木構造は、「全体−部分」や「一般−抽象」関係の構造はかきやすいが、グループの重なり合いや、遠くのものとの関係は、うまくかけない。色気を忍べば、その制約が木構造のもつ観点を強化する。たとえば、手がつけられない大きな問題を、なんとか扱える小さな問題に分割する(それから地道にやっつけていく)という観点を。
文章の構造にも制約をつけられる。たとえば「論点」+「意見」+「理由」という文章の基本構成(山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』)。たとえば「たしかに〜だ。しかし〜だ」のように、自分の反対意見をいったん取り上げ、それに対して再反論するという文章の型(樋口裕一『ホンモノの思考力』)。このような制約を意識することで、意外にも文章は書きやすくなる。これは制約を通して「ひとを説得するにはどうすればよいか」という観点が書き手に(おのずと!)導入されるからだと思う。

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

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ホンモノの思考力 ―口ぐせで鍛える論理の技術 (集英社新書)

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ところで、構造を図式化するやり方は、時間の流れを意識する図式化と、時間の流れを飛び越えたような(静的な、論理的な、概念的な)図式化にわけられることがある。この区別はなかなかわかりづらくて不安なのだけれど、僕はちょっと変わった観点でこれを区別しよう。すなわち、時間的図式化は、生き生きとした物語を味わう美意識に基づいた図式化である。そして、論理的図式化は、広くて揺るぎない世界観を磨き上げる美意識に基づいた図式化である。