音と光

地下アイドルのライブに行ってライブを観ているときに楽しいと感じる時間の割合は自分は2割くらいですが、そのなかで楽しくないときのピークに覚える言葉は「音と光だなあ」というものです。目の前に音と光のパターンが構成され、一般にそれはエンターテイメントとみなされるものですが、そのパターンにいま自分は一切のエンターテイメントを感覚できず、またその、エンターテイメントになりうるパターンと、その逆のパターンについて、それを分ける根拠を分析できず、一方にエンターテイメントである音と光のパターンの可能性があり、他方でいまここで現象している音と光のパターンがエンターテイメントではないことは一切の説明ができないにもかかわらず、それがそうであるということだけははっきりと感じられるということを思っての感想です。そのまったく味のない音と光のパターンを味わっていた苦痛な時間というものをこうやって現場日記にしたときにやっとそれは「おもしろい」ものと消化して時間を修復するわけですね。平和です。

Maison book girlというアイドルのライブを観に行きました。めぞんぶっくがーる。経緯としては、定額制音楽配信サービスの無料お試しをする機会があり、そのなかで適当にそれっぽい(一般(?)に音楽ジャンルにこだわりのある聴衆に評価されがちな流派の)アイドルの曲を聴いていたときに、よいなと思ったアーティストのひとつがメゾンブックガールでした。自分は音楽にも音楽ジャンルにも興味がないのでこのアーティストの属するところの音楽ジャンルがすなわち自分の趣味に合っているかに興味はないのですが、全体としてこれらの曲や音が好きということは、この無名ジャンル(「このアーティストの楽曲」という外延的定義によって定義される音楽ジャンル)を好きだということはできそうです。これも「音と光」に通じるのですが、好きな音とそうでない音があることは知ることができる一方で、それを分ける条件はわからないところは不思議です。音楽や音楽ジャンルに興味があったならばそこを深掘りすることもあったかもしれません。

それだけですとただ曲を聴いていただけですが、ライブの動画を観てとてもよいなと思いました。これですね。

続きはこちら。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLYcRQT345r2a3l344rKZ8BwEXlQB3Qo_K

単純におもしろいなと思ったので今回のツアー(6/23)に申し込みました。
http://www.maisonbookgirl.com/49ftour5f/

ホール会場だったのでアイドル現場らしいつらみは少ないだろうと期待していましたがだいたいそのようでましでした。お客さんは老若男女いる感じでした。文化会館感でええな。1曲目に『レインコートと首の無い鳥』


このMVはダサいと思うのでメイキングを観たほうが得だと思います。ブクガのMVは僕は8割ダサいと感じます。追いついていないのでしょう。


大きい音を聴くのが久しぶりだったのもあってか、大きい音と踊りだ、いいなと素朴に思いました。曲で聴いているとそういう印象がありませんが迫力のある音が似合う曲だと思いました。大きい音は嫌いです。そのダサいふりつけですが遠くからステージを観るとそうも感じません。かっこいいなと思いました。踊りを観ることはいいなと思いました。踊りを観てもクソもミソも思わないこともあります。これも対岸の「音と光」です。

観ていて目に留まるのは(それははじめから決めていた節もありますが)和田さんでした。和田輪。次元を間違えているのではないかという嘘っぽい存在感です。なんなら彼女の眼鏡も視認できないくらいの遠さで観ていましたが、それゆえ長い黒髪のシルエットは一番追いかけるのに便利でした。ダンスの感じがその存在感に対して嘘っぽい感じなのですが、だからこそ正対している感じもします。何一つ間違えていないがゆえにズレているが、間違っていないのだから直すすべがないというような納得のできなさがあります。それは正しいと思います。ライブ動画でも存分にわかりますが、歌がうまいです。歌がうまいと思いました。僕はライブ会場でうまい歌を聴くと平均的には「なんでそんなに歌がうまいのw」とおもしろがります。一般に人間はCDと同じように歌えないのにCDのように歌が聴こえることが珍しいから笑えるのでしょう。和田さんはもともと存在感が嘘っぽいので、歌がうまいという嘘っぽさに対する違和感もありません。残るのは草が刈られた「歌がうまい」です。歌い方でいうならコショージさんがいいなと思いました。最後の方で左右に腕振りをするところがあったのですが(あのコンサート会場で月並みにあるやつです)メンバーそれぞれふりの趣が違っていて、和田さんの動きがなめらかすぎて釘付けになりました。見るところ。レーザーっぽい光の演出はやっぱり単純にかっこいいですね。ステージを観ているという感じがなくなります。一方で眩しくて眠たくなるライティングもありました。どちらも光です。

好きな曲たちを演者が添えられて聴くことができたので全体として満足しましたが、イベントとしてはとくにおもしろみがありませんでした。動画で観た4Fを越えるほどのものは期待していませんでしたが、期待はずれだったというのが率直な感想です。最後の語りのパート(『教室』)からの、不気味な鳥の仮面を付けての『レインコートと首の無い鳥』はよかったです。「出題」されている感じがしました。ブクガのCDには曲を流しながらお話をする同人ドラマCDみたいなトラックがあるのですが、プレイリストを作るときにのけなければならないから邪魔だなと思っていました。これは曲を読むための道具として使えるかもしれないと思いました。