JAIST説明会:知識科学を研究し教育するということ

人工知能なんちゃら研究会 2日目のときの話。北陸先端科学技術大学院大学の説明会に行きました。学部生や社会人など40人くらいが参加していました。研究科の説明では知識科学研究科の國藤先生にお話をうかがいました。
説明会と講演の感想を書きます。JAISTの概要やカリキュラムは調べればあるので省略。

感想

大学院大学は教育への熱意がすごい! 国や分野を問わずいろんなひとを集めて、手厚く人材を育てようという意気込みが伝わる。知識科学という耳慣れない分野にも関わらず、研究を体系化し全体像を描き出そうとする試みを感じ取れる。つまり知識科学を教育し研究する機関としての誇りを感じさせてくれた。
JAIST修士にも問題発見能力を身につけさせることを目指している。知識科学研究科では知のコーディネータとして修士を育て、知のクリエータとして博士を育てる。文理融合、主観の知と客観の知の融合、科学技術力+α(コミュ力とか思考力)など、いまどきどこでも聞く謳い文句だが、JAISTだからこそ説得力をもつと感じた。
いやもちろん、知識科学が何かなんてわからない! どれだけの価値をもつかも予想できない。でも、やる気のある学生と精鋭の研究者が集えば、知識科学なる分野の確立と伝道を果たすのではないかと期待できる。知的クラスター創成事業や共同研究など、知識科学の関わるプロジェクトにも可能性を感じる。
知識科学に興味をもったのもあるが、新しい分野の発展を志す組織のあり方について考えさせられた。新しいことを研究し教育することは難しい。難しいことに取り組むのだから、ケチをつけるのも簡単だ。だから、その価値は自分たちで見出し守るしかない。その試みを通して社会を変えたいなら、組織は使命をもち結束しなければならない。できるのか!

講演「変わる大学院、変わってはいけない研究者たましい」

朝日新聞で「大学ランキング」の編集をなさっている小林哲夫さんの講演を聴講した。科学者と技術者の違い、大学院のあり方、学生として経験してほしいことなどを聞かせてくだった。とくに実験についてのお話が印象深かった。
小林さんは大学院の実験が社会で役に立つとおっしゃった。大学でやった実験と同じ分野の実験を社会でやれることはめったにない。しかしどこにでも通用するノウハウが実験で身につく。企業のひとが研究について尋ねたときに知りたいのは、研究の内容以上に、あなたが問題にどのように取り組み、失敗し、解決を試みたかという物語だ。
ガチ理系ではない僕にとって実験のなんたるかはけっこうあいまいだ。対象を深く観察・分析すること、データを厳密に扱うこと、失敗を通して試行錯誤することなどがきっと重要なノウハウなのだろう。難しそうだけど、そういうことを意識しながら研究できたらいいなあ。
また、ノーベル賞研究者の考え方を通して、ユーザの声や社会への貢献を意識することの重要性を主張なさっていた。ひねくれた見方をすると、知りたい!を追求する姿勢の科学っていうのは、いまそこまでプッシュされていないのかな、と思ったり。一方で、同じくノーベル賞を通して基礎研究をプッシュする意見を聞くこともある。
こういう価値観の混じりって、子どもに科学の価値を説くうえでちょっとやっかいに思う。個人的な考えをいえば、真理を追究することは天才の舞台であり、そこまで価値はない。知的好奇心みたいなものを子どもに求めるのはけっこうだが、ただの願望や理想でないかは反省したい。役に立つ応用を通して科学をアピールするほうが健全だと思う。そういう意味で研究者の工学的側面に注目なさった小林さんには共感した。