わたあめ会 第8回:すでに起こった未来、起業家精神

ドラッカー『チェンジ・リーダーの条件』、part5の1-2章をやりました。
キーワードは「すでに起こった未来」の予測。すでに起こった未来とは「経済や社会の断絶の発生と、そのもたらす影響との間の時間的な差を発見し、利用すること」(p.196)、あるいは変化そのもの、パターンそのものの断絶。乱暴にいえば、未来はわからない、わからないなりに考えよう、ということだと思う。
何がわかり、わからないかを、区別することが重要なのだろう。問い方を定めることになるから。うるべき答えをみちびける。何かが影響を与えることがわかっているなら、どんな影響を与えるかがわからずとも、変化に対応しなければならない。どのように対応するか以前に、何を仮定するかが問題になる。ひとは「?」(問い)しか共有できないとズーニーさんもいっている。
ビジネスとか工学とか、問題をいかに的確に捉えるか、という性格をもっている気がする。たぶん、そんなある種の合理性はけっして古いフレームではない。問題と解決というゲームに乗って経済が活性している。あるフレームはそれ自体の正しさを証明できない。時代が正義なのか。
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」(アラン・ケイ - Wikipedia)という。未来を発明するとはどういうことか。
ところで、ドラッカーはマネジメントという概念を発見した。発明はされていた。っていう話があった気がする。
以下、メモ。

わたあめ会 第8回
2008年08月08日(金) きをふし

■part5 起業家精神のマネジメント

●なんか
ドラッカーのやってること
 マネジメント→『チェンジ・リーダーの条件』
 社会とかコミュニティ→『イノベーターの条件』

もう一つの分野
 人間(Individuals)→『プロフェッショナルの条件』

『プロ〜』に出てきたマネジメント関係の話題
知識労働と肉体労働における生産性の違い
・自己管理の方法。自分の強みを知ること、時間を管理すること
・意思決定のための基礎知識、情報型組織

あとテクノロジスト。

関連。
MOT -技術経営- Platform B03 起業論
http://www.mot.gr.jp/index.php?_action=b03

●1章:予測できないことを起こす
何が起こっているかを理解する。未来における影響を予測する。
ビジョンをもち、新しい事業をつくり、経済的な成果をあげて責任をはたす。

▼明日をつくるために今日何をなすべきか
・未来はわからない
・未来は、今日存在するものとも、今日予測するものとも違う
望みうることは、すでに発生したことの未来における影響を見通すこと。

リスクを伴って何かを起こすことはできる
 →結果としてリスクが小さくなる?

仕事を体系的に行うための方法論
・「すでに起こった未来」を予測する
  ・「経済や社会の断絶の発生と、そのもたらす影響との間の
    時間的な差を発見し、利用すること」(p.196)
・ビジョンを実現する

▼「すでに起こった未来」を探せ
企業の内外にある、変化そのもの。パターンそのものの断絶。
どんな影響があるかはわからない。でも、影響が現れることは確か。
「すでに起こった未来」は必ず機会をもたらす。

知識の実用化には時間がかかる。文化的な変化もゆっくりと影響する。
(やえがしせんせいもいってた)

▼どこに「未来」を探すか
「すでに起こった未来」を見つけるための領域
1.人口構造を調べる(予測しやすい)
2.あらゆる知識の変化を見つける
  ex.行動科学→教育、学校、マネジメント
3.他の産業、他の国、他の市場に目を配る
  ex.貧しい人がテレビを買い満足する
4.産業構造の変化を検討する
  ex.材料革命(材料と用途、分野とプロセスがごちゃ混ぜに)
5.企業の内部に変化を見つける
  ex.企業内の摩擦→意見の対立
   AT&T:インフラの事業から商品の事業へ

「すでに起こった未来」が機会とリスクを大きく変化させる。

▼新しい現実が見える
その予測は「すでに起こったこと」ではないか?
ex.GMの成長:1910年前後、自動車はすでに輸送手段だった

「われわれ自身は、社会と経済、市場と顧客、
 知識と技術をどう見ているか。それは、いまも有効か」(p.202)

古いことに疑問を投げかけ、変革のための意思決定を余儀なくさせる。
ただし、願望による思い込みはリスクになる。

▼「ビジョン」を実現する
必要になる製品やプロセスを予測するのではない。
ビジョンを実現するために新しい事業をつくり出す。

ビジョンは起業家的なもの。
 →「富を生む機会や能力」によって経済的成果をあげること(事業のため)
狭い領域、ある小さな特定の発展が求められる。

IBMとコンピュータ:知識を生む能力と、知識を成果に結びつける能力は別

理論上の仮説を現実の事業に転換する。
投資銀行:起業家の概念から、資本の創造的役割を中心とするシステムを構想

他の国や他の産業を真似する。

▼天才の創造性はいらない
必要なのは仕事。才能ではなく勇気。全人格的な献身。
イデア・製品・プロセスはビジョンを実現するための道具に過ぎない。
(さとうせんせいもいってた)

ビジョンの有効性と実用性(行動を起こせるか)を測る基準とは?

研究は実用的な知識のため、ビジョンは経済的な成果のため。
有効性の基準は事業としての成果(利益の獲得、財やサービスの提供)。

▼未来において何かを起こす責任
起こっていることを理解する。リスクを負って新しいことを起こす。

ドラッカーはつねに経済的な責任を強調している。
ひとつは、事業を続けているだけの利益を得ること。
もうひとつは、財やサービスを社会に提供すること。

売り上げを最大化しろ、とか、大事なのはお金じゃない、とかじゃなくて、
利益を企業の責任とする一方で、富の生産という側面に注目しているのが絶妙。

●2章:既存の企業がイノベーションに成功する条件
起業家精神は既存の事業とそのマネジメントから切り離さなければならない。
組織全体に起業家マネジメントを構築することでイノベーションが成功する。

▼「大企業はイノベーションを生まない」は本当か
イノベーション起業家精神の障害は、既存の事業、特に成功している事業。
既存の事業は、規模や成果、将来性のわからない新しい事業より優先されるから。
 →大企業はイノベーションを生まないという通念

イノベーションは自然の創造ではなく仕事。
意識的な努力によって、いかなる企業においても実現できる。

起業家精神が生まれる構造
組織のなかで一人ひとりがいつでも起業家になれる構造が必要。

新しい事業を既存の事業から分離して組織すべき理由
1.既存の事業は責任者の時間とエネルギを奪う
2.責任者は既存の事業を優先し、新しい事業を先延ばしにする

新しい事業の核となる人は高い地位にあることが必要。
トップマネジメントとして権限と権威をもつ者が責任をもつ。

▼新しい事業をおろそかにしない方法
新しい事業は赤ん坊のようなもの。

事業をおろそかにしない方法は、初めから独立した事業としてスタートさせること。
自由な人事をおこなう。負担を軽くする。新しいシステムを確立する。

ex.化学品メーカの新材料開発
 投資利益率の計算から外された結果、開発が成功し成長した。

▼起業家マネジメントにおけるタブー
1.既存部門と起業家的な部門を一緒にしてはいけない
2.大企業と起業家たちとの合弁事業は成功しにくい
  自らの人材によって事業を手がけたときに成功する
3.得意な分野でイノベーションを行う。多角的であってはならない
  能力と理解が必要。「新しいものは、必ず問題に直面する」
4.買収によって起業家的になることはできない
  買収先の企業にマネジメントを送り込まなければならなくなるから。

イノベーションによって成功するためには、
自らの組織全体に起業家マネジメントを構築しなければならない。