相対主義

相対主義の反対は何か。
相対主義は何か。代表的にいえば「AはBよりもよい、ということは言わない」と言うことだと思う。この反対というと「AはBよりもよい」だ。この「よりも」が「相対主義の反対」に欠かせないとするなら、「相対主義の反対」を「絶対主義」とよぶのはおかしい。「進歩主義」か。「Aはよい。ただよい」ならば絶対主義かもしれない。
「AはXの点でBよりもよく、BはYの点でAよりもよい」と言うのは相対主義っぽい。そこで「ゆえにAとBの優劣は決められない」と言うならば、もっといわゆる相対主義っぽい。この言いはひとの生き方に何もヒントをくれない。だからこういう、ぽい相対主義は、「それは相対主義だ」という単調な言いで堂々と批判される。
ぽくない相対主義は「我々に重要なのはXの点だ。このときAはBよりも優れている」と言う。ぽくない相対主義は我々に重要なのがYの点であるかもしれないことを否定しない。ぽくない相対主義は、いつどんなときでも正しい「重要」の基準がある、と言えないからだ。絶対主義は基準を捨てる。進歩主義は一個だけ残す。相対主義は捨てない。ぽくない相対主義は、そこからどれか一個を選ぶ。
ぽくない相対主義は、その一個を選んだ理由をいつどんなときでも正しいと説明することができない。いまこのときには正しいかもしれない、と言う。ぽくない相対主義は説得のために努力しなければならない。その一個がいつどんなときでも進歩主義の残した一個よりも優れていると言わない。