山名沢湖『委員長お手をどうぞ』(2)

感動した。泣いた。
第一巻と比べて絵も話も洗練されている感じ。逆に、ドラマっぽすぎて違和感もなくはない。でもよく考えると日常ってどこまでが日常なんだろうと疑わしくなってくる。これも日常なのかもしれない。
例のごとく、各委員長ごとに感想を垂れ流していきましょう。
飼育委員長。家庭科部の双子がてらしゅーる。
で、放送委員長。てらくーる。放送委員という題材でありながら、しゃべりでなく音楽に着目したということにこの話の巧妙さを感じる。
このマンガは、委員長そのものに限らず、それをとりまく人間関係がおもしろい。ひとりの人間を軸に広がる空間、そのなかの相互作用によって生まれる関係性が味わい深い。この話もいいんちょのファンである男子と女子が楽しみを共有することで、まがった感情が増幅されたり、その事態に対するネガティブフィードバックが対話のなかで発生したりして、その結果、本当に大切なものに気づく、というじつに爽快なシステム。なによりいんちょの懐の深さが異常。
文化祭実行いんちょは、自身の行動力と、立場上のしがらみとの板挟みのなかで悩むという、とても奥深いテーマのなかに立っている。職業における役職のあり方についても考えさせられる。開発系でいうなら、若いうちは与えられたものをせっせと作って、そのうちちょっと設計そのものに関わったり、やっと経験を積んだと思ったら管理職になってよくわからない仕事をして、それでいいのかと。いや、これはあくまでたとえ話で、実際がどうなのかは知らんが。
管理する者は、管理される者に入り込めない、という、積極性のパラドクスというか。そのうえで自分がどういう立場を選ぶか、あるいは、おかれた立場に対してどう折り合いをつけるかというのは、自分をみつめていくうえでとても重要な問題だ。歯がゆさを感じつつも最後には立場を守るいいんちょが切なくて、でもなんだかあたたかい。
選挙管理委員長。この話はちょっと変わってる。あまりにアニメちっくというか。ほかとはまったく毛色が違っていて、それもまたおもしろい。つーかこの子かわいいな。
で、なんかまた変わってるんだけど、宗教委員さん、購買委員長、牛乳委員さんがそれぞれのエピソードを語る「マイナー委員連絡会」というお話。
宗教委員さんのお話はなかなか詩的というか。ちょっと理解しかねる。
購買委員長のお話は直撃。金井さんかわいすぎ。こんな女の子おったら監禁してえんだが。いいんちょに嫉妬。殺していいですか?
牛乳委員さんはいいヤンデレ。つーかこの辺はいかにも短編って感じなので、読んで楽しんでもらうしかないな。
そして卒業アルバム委員長。いろいろすてきすぎる。写真を撮るという立場による副作用は管理と被管理というレイヤーにもつながるし、この話ではいんちょの立つレイヤーそのものが相対的に落とされる、つまり撮るものから撮られるものへと変化するというのが現象としておもしろい。しかし「撮りづらかった距離感」というのは、逆に撮るレイヤーと撮られるレイヤーの重層によるものだから、明確な境界はもともとないのかもしれない。
写真そのものに対しする現在性についても触れられていておもしろかった。あと二子ちゃんといんちょの関係がすごくいい。二子ちゃんのもくろみが、さきのレイヤーの入れ替えによって無駄になったのは切ないけれど、卒業式のあとで個人的に学校を撮っているいんちょは、彼女に対する肯定のメッセージが読み取れるんじゃないかな。いや、それはさすがに神様的なんだけど。そんで最後がやばい。すてきすぎて勃起しそう。
そして最後はふたたび学級委員長! 非常に濃い。役割と自我との関わりだとか、ほかの価値観とのせめぎあいだとか、世界における自己の矮小性や自意識のセカイ性だとか、そこから仮想されるシステムのレイヤーだとか。それにしても、やっぱり風紀委員長の存在感は圧倒的。彼女の存在って、ちょっとひねればこのマンガの枠組みをぶち壊すこともできそうなんだが。絶妙なバランスで彼女が役割をもち、それでこの物語が完成されているとも思える。
なんかもーすてきすぎる。