オブサーブ

オブジェクトという言葉はよくわからない。モノと言い換えられることが多い。

LONGMAN Dictionary of Contemporary English(以下同様)
a solid thing that you can hold, touch, or see but that is not alive

見たり触ったして確かめられるもの。「現実世界の実感」というニュアンスがある。オブジェクト指向による開発が上流工程と下流工程へムーズに行き来できるのもこの点による。その意味でのオブジェクトはデータと振る舞い(状態の変化)をもっている。

a combination of written information on a computer and instructions that act on the information, for example in the form of a document or a picture

ところで、オブジェクトはときにサブジェクトと対比することで意味を成す。いわゆる「目的語」と「主語」である。より抽象的に、目的を表すこともある。

the purpose of a plan, action, or activity

サブジェクトはまた「主題」という意味合いをもつ。オブジェクトの「目的」という意味合いとなんとも分かちがたく、混ざり合うようにして巡っている感じがする。

the thing you are talking about or considering in a conversation, discussion, book, film etc

これらの混沌になんとか仕切りを設けるなら、あちら側とこちら側という対比がわかりやすいのではいだろうか。主題は認識であり、目的は外部である。
しかし、内部と外部を区別することもときに適わない。わたしたちは日々オブジェクトとサブジェクトの混ざり合うなかで生きている。

松岡正剛『知の編集工学』(p.272-273)
ちなみに object の語源であるラテン語 objicere には「撥ねつける」という意味がある。ゾウリムシの全身運動にとっては、オブジェクトとは本来は撥ねつけられてしまうものなのだ。しかしゾウリムシはそこへ行き、そこにあえて重なっていく。それはせいぜい食餌行為というものではあるけれど、それがもうすこし高等な生物になってくると、たとえばチョウは花々の情報を獲得するために、カエルは虫の情報を獲得するために、ヒトは相手の感情情報を把握するために、サブジェクトとオブジェクトが距離的に離れているにもかかわらず、その二つを透過させ、浸透させ、さらには相互作用させるのだ。

オブサーブ。

知の編集工学 (朝日文庫)

知の編集工学 (朝日文庫)