学びのための:リソース←リポジトリ←インデックス←パターン←目的

学ぶために利用できるものが、意外と、知らなかったけれど、あるものだなあと、大学のなかで思ったことがある。本とか文献およびそのデータベースっていうのはもちろんだけれど、自主ゼミとよばれるような活動あるいはコミュニティなんていうものがあるのは、それを知るまえには想像できなかった。利用できるものをおおざっぱにリソースとよんでみるとして、それには情報、ひと、場所、活動、制度なんかがある。
こういうリソースはまとめて知ることができるとよいですね、と考える建前はじつに平凡で悪気もないけれど、実際、そういうリソースのリストみたいなものがあったとして、まあ有効活用されるものだろうかと疑う。リソースの集合というものを、あんまり平凡な被教育生活のなかで、すごいと思ったことはないね。
リソースの集合をリポジトリとよぼう。僕たちはリポジトリを有効活用しない。ここでは学びのリソースのリポジトリを考えている。論文検索システムなんかはその典型だし、空き部屋の利用ルール、みたいなものも、場というリソースのリストを導出できるので、拡大解釈すればリポジトリだ。そういうものは、意外とある。けれど知られないし、知ってもらおうとリポジトリを構築しても、僕たちは使わない。だから、まとめようぜ、なんて労力をおかす決心がつかないわけ。
リソースをなぜ使うのか。リポジトリがあるからではない、それは笑えるぐらい明らかに否定できる。目的があるから使うのだ。その典型は「あることを知りたい」という目的だが、しょせんは典型であることに注意だ。「勉強」のために「図書館」を使う、というシナリオが成立しないシチュエーションは無数にえがける。でもそういう典型もある。とにかく、目的があるからリソースを使う。
ああ、何かやろうとしても僕はすぐ飽きてしまう。でもいまはこれをやりたいと思っている。これに興味をもつひと、数人くらいはみつかるんじゃないか。じゃあ勉強会をやろう。あの部屋ならある程度自由に使える。いや、まずはあの自主ゼミでアイデアを発表してみるところからはじめよう。あの自主ゼミにいるひとたちはみんな自分とは違う観点をもっているから、想像もしない意見が飛び出てくるだろう。
さあこういうストーリーがあったとして、感覚としては、僕はいくつかの手持ちのリソースを知っている→手札。そして目的がある。その目的に合ったリソースを手札から選ぶ、そういう感覚。リポジトリは意識していない。リポジトリはいわばグローバルな手札だけれど、それはべつに僕の手札は、断じて僕の手札としてしか意識しない。でもこういうちょっと豊かなリソースのマネジメントができるのは、僕が(手札を)持てる者であるからだ。
持たざる者が手札を揃えるときには、リソースが「あるということ」+そのありかを知らないといけない。そのためのもっとも効率的なメタリソースは、やはりリポジトリであるとは期待する。でも、やっはり持たざる者にとってリポジトリは、手触りを感じられるものではないね。
だから出発点は、そのひとにとっての目的、命ある目的であると思う。彼には目的がある。その目的に役立つリソースを、彼は知らない(だから彼の手札にはない)が、じつはある。それを見つけるために、彼にはリポジトリという効率的なメタリソースがある。だから彼はこう思う。リポジトリが必要、だ……?
ハッピーな想像だ。そんなハッピーじゃない。彼はやっぱり感覚としてリポジトリの価値がわからない。使い方もわからない。彼は目的をほかの何かに結びつける技をもっていない。手を伸ばしたところにはもうリポジトリがあるのに。
それは悲観だ。僕たちはいつのまにか、目的とリソースを結びつけているものなんだ。それはリポジトリなんか経由しなくても、偶然に僕たちはリソースに出会うからだ。そうやって手札を揃えて、それを使えるようになるんだ。だから、リポジトリは効率的かもしれないけれど、運命的に必要ではない。
端と端が出たので近づけていこう。僕たちは自然的・偶然的・経験的に、目的とリソースを紐づける技を身につける。紐と紐のあいだにあるものは手札である。しかし手札は自分だけの狭い世間だし、整理のされ方が自分のために特化している。それは長所と表裏一体なんだけれど、短所を補うためにリポジトリという選択肢があってもいい。真ん中にリポジトリを置いて、目的とリソースを両側に結ぶ。このとき、結ぶための技とはなんなのだろう。それは僕だけの経験ではない。
みんながうまく使える技は、たとえばパターンとして整理できる。このパターンというのはちょっとした専門用語なので、こんな言葉を遣うのは敗北感があるけれど、無理のない範囲でこの文章を書き終わりたいという欲が出てしまって。でも基本的な考えはものすごくシンプルで、リポジトリを有効活用する技を、ある程度みんなにわかるように整理して伝えることができるだろう、という期待です。使うひとの目的とリポジトリとをべたっとくっつける糊には、たとえばパターンがあるのではないか、という提案です。
そろそろこの日記の見出しの言葉を回収してしまいたいので、インデックス、インデックス、インデックスです。リポジトリにはインデックスがあります。インデックスは欲しいリソースに導いてくれる、いろいろたとえようがありますが、看板、道、窓口です。うまくリソースを探せるか、という問題は、うまくインデックスを選べるか、というメタ問題を含んでいます。インデックスの選び方、あるいはインデックスへの案内を、パターンに押し込めることができたらよいのですが。



リソースの例
情報系の学生がタダで情報収集できるメーリングリスト+α - 反言子
卒研テーマを決めるなんて考えちゃダメ - 反言子