わたあめ会:『入門政治経済学方法論』第0章

本はシーケンシャルに読んで理解した気になるけれど、ランダムアクセスしようとしたときにわかっていなかったと気づくなあ。
id:uesimaと第2期に入りました。寝坊してごめんなさい。

第0章 政治経済学方法論のために

自然科学との比較や人文科学との関わりについて述べられていておもしろかった。とくに倫理や道徳のような規範に関わる問題を扱うという点で社会科学の奥深さが感じられた。政策の「よさ」を判断することは、最後には主観に依るものであり判断できない。そこに至るまでのあいまいさを排除するために数理や論理による分析が用いられる。理論は規範を評価するためのものだが、規範の根拠そのものではない。

なぜ科学は「AはだいたいBである」ではダメなのか

科学は反証によって進歩する。説明をし、説明を否定する説明をするための仕組みがないと、説明がすり替わっていくだけでなんでもありになる。
社会科学では確率的な問題が多いので基準をつくって事実にもっともふさわしい説明を発見する。そういう推論をアブダクションというらしい。「Aは90%の確率でBである」というとき、それが5回連続で起こる確率は6割である。「AとBは半々だよ」というとき、5回連続で起こるのは3%しかない。このような明瞭な結果を得るために「ぐらい」じゃダメなんだなあ。
基準をつくることは、理論や意見の正しさを直接支えるものではなく、ほかの理論や意見と比較してどれくらい正しいか(もっともらしさ、likelihoodというらしい)を明らかにするために便利なのだと思った。

実験とシミュレーション

自然科学には反証可能性に加えて再現性が重要である。環境問題や大規模エネルギの実験など、検証することが難しい研究もある。しかし確実性の高い仮説を用いてシミュレーションをおこなうことで信頼できる結果を得られる。
社会科学において扱う問題も再現しにくく、また確実な仮説もない。だから実験の代わりとしてシミュレーションを用いることは難しい。そこで、実験にかかるコストを抑えたり集中すべき研究をみつけたりするために、シミュレーションによってあたりをつける。シミュレーションそのもので何かを検証するわけではない。
同じ道具でも、目的は違うかもしれない。ゲーム理論も、それ自体によって社会を分析できるわけではない。道具を手にし興奮して、目的を誤ってしまわないよう気をつけようと思った。

真理と方法論

本書は政治経済学に関するいくつかの方法を紹介している。方法を並べただけでは方法論といえない。この導入は、真理に対する態度、科学と理論と方法の関係、方法と方法の相対化などによって、政治経済学という分野に取り組む心構えのようなものを示してくれた気がする。事例研究の意義や帰納と演繹の近さなどが興味深い。
読む進めていくうえでも、個々の方法について理解したあと、それを政治経済学、社会科学において位置づけできるように意識したい。

入門 政治経済学方法論

入門 政治経済学方法論