「読めていない」と気づかされる10の質問

文献紹介のゼミを通して学んだことをまとめる。

文献そのものを調べる

  • 「これはどんな本ですか?」
  • 「著者はどんなひとですか?」

資料として本の一部を配布するときには、何の本かわかるようにする。書き込んでからコピーするか、奥付を添付する。論文なら収録雑誌など。
本全体としてどのようなことが書かれているか把握しておく。
著者がどんなひとか調べておく。所属や専門など。
レジュメに引用するときにも出典を明記する。

概念を説明する

  • 「○○とはなんですか?」

用語の意味を説明する。あれば専門分野の辞典を用いる。その意味を吟味して、自分の言葉で説明する。また、具体的に当てはまるものを考える。さらにその記述が本文中の意味と一致しているかを考える。
説明が本文に書かれている場合も、言い換えと具体化を意識する。それが辞書的な意味なのか、著者独特な意味合いが込められている(鍵括弧をつけるべき「○○」)かを考える。

内容を説明する

  • 「〜とはどういうことですか?」
  • 「自分の言葉で言うと?」
  • 「具体的にはどういうこと?」
  • 「〜なのはなぜですか?」

文献に書かれていることを理解するのが最重要。書かれていることを言い換えて説明できなければ、理解していると思ってもらえない。
(ところで、なぜ「書かれている通りです」でダメなのか。意味は構文に束縛されない。すなわち違った構文が同じ意味を表すこともある。したがって、意味を理解したなら言い換えることができなければならない)
具体的な現象を挙げることも、理解を示すうえで重要である。適切な例を挙げることが重要なのでなく、その例を著者の主張に当てはめて議論のきっかけにできることが有意義だ。具体例の食い違いによって、自身の理解のずれや、著者の論理の甘さを発見できるかもしれない。
理由を答えることも大事である。文中に書かれているなら、すなわち論理展開を理解することだ。すべての意見に理由が書かれているわけではない。そこは常識で補って説明できなければならない。そうでなければ、著者の意見に根拠が欠けていることを指摘できるかもしれない。明示されていない理由を考えることは、自分がその話題の背景をイメージできているかの確認にもなる。

関係を見い出す

  • 「aとbとcはどういう関係ですか?」

章立てや箇条書きなどにおいて、それぞれがどういう関係であるかを把握する。もし気の利いた書き手ならトピックセンテンスを意識する。辞典ならはじめの1パラグラフに要点がまとめられていることが多い。
ある話題について(a)(b)(c)などと分けて記述されているときは、それぞれがどのような関係にあるかとくに注意する。ある話題について複数の観点から述べているなら、極論、どれが一つを理解すれば十分である。逆に、観点は違えどすべて同じ内容を述べていることに気づかなければならない。
ときには、ばくぜんとした列挙にしか見えないこともある。著者がよほど無神経でなければ、それでも何らかの関係を見い出すことに損はないと思う。「〜は三つあります」とか「ひとつは……もうひとつは……です」という語り口はそれらしく聞こえるが、ただのリズムとして受け流さないようにしたい。しかし深読みかもしれないので、難しい。

批判する

  • 「〜は正しいと思いますか?」
  • 「これを読んでどう思いましたか?」

意見の理由について、それが妥当であるか考える。意見に関して、現実とのずれがないか考える。どこまで正しく、何が間違っているか考える。論理がねじれていないかたどる。批判することは、書かれていることを理解するのが前提なので、もちろん難しい。
「どう?」というたぐいの質問は、意味としては不鮮明だ。しかし「この文献について、またこの文献を読むにあたって、あなたがもっとも強く感じたことについて語ってください」という問いかけであると捉えるなら、答えなければならないと思う。もし「一言では答えれない」と言うなら、感想をまくし立てないとうそだ。

まとめ

理解するためには言い換えが重要だとたまに聞く。思うに、意味というのがさまざまな表現において同一であることによるのだ。意味を考えることは延々とした言い換えをたどることだ、なんていうと哲学上の一立場にすぎないが、文献に取り組むうえで有益な指針であると思う。
具体例を挙げることで、外延的性質を通して概念を理解できる。また事物がどの概念に当てはまるかを考えることで、いわゆる「分ける」=わかる。抽象的なことを理解する能力も重要だが、具体化できないとやはり日常的にはさむい。
というわけで、言い換えと具体例を考えることが文献を読むために有効な手法だと思う。国語の好きな高校生には当たり前のことですみませんが。