還り道

ほうった言葉はきみにぶつかるか。

書く。
読む。
書く。
読む。

よい文章を書くこと。
よい文章を読むこと。
そこに何が起ころう。

たとえば気持ちを伝えたい。
ただ、このいまの、感情を。

ぽろぽろと崩れ落ちて、
ボロボロの言葉になる。

痛い。
痛いよ。

だいじょうぶ? 安心して。
もっと、ゆっくりと、ていねいに。
やさしく、あたたかく、大切につむごうね。

あるいは、

崩せ。壊せ。殺せ。
脳の内側へ沈んで。
こころをからだに。
ズタズタになった言葉。
これが生き延びるすべ。

書くことはこれほどに異常。

誕生し、世界を読む。
やがて世界は分節する。
自然の分節、人工の分節。
しだいに世界は解釈される。

あるとき立ち止まる。
振り返ってしまったのだ。
一歩を踏み出す。異常事態。

ああ。
世界に、読まれている。

逆走したとき、
道は姿を狂わせる。
あるべき順路。秩序の、倒錯。
ひずみはじめる世界。

なんのことはない。
世界において、狂うわたし。
ちっぽけな構図。主観の暴走。

いまさらに揺るぎない、
自然の分節、人工の分節。
ほうった言葉がきみにぶつかる。

世界がわたしを読み、
きみが世界を読んだ。

起こっているのは、そういうことだ。